人工知能・ICT時代に求められる能力
人工知能やICTが目覚ましく発展する今日。華々しい技術革新の影では、職を失っていく人も多くいます。
では、私たちがこうした世の中でよりよく生きていくためには、どうしたらよいのでしょうか。
まずは下の図をご覧ください。
インテルの創業者の一人であるゴードン・ムーアという人が唱えた、「半導体の集積率(=性能)は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則をグラフにしたものです。これが出されたのは今から50年くらい前で、それからはおおよそこれに則ったスピードで進んでいます。
さて、これはどのくらいのペースなんでしょうか。ちょっと計算してみますと...
2020年:4倍
2025年:40倍
2030年:406倍
2035年:4096倍
2040年:41285倍
2045年:416127倍
2050年:4190304倍
になります。たった30年ちょっと後には400万倍です。恐ろしいほどのペースでコンピュータの性能が上がっていくのがお分かりいただけるかと思います。
さて、ではこのようなスピードでコンピュータの性能が上がっていくとどうなるでしょうか。
たとえば人工知能。
現在、車の自動運転をする人工知能が開発されつつあります。そうすると、私がたとえば今一所懸命車の運転の練習をして、タクシーのドライバーになったとしましょう。と思ってもすぐに、自動運転車にその仕事を奪われてしまうかもしれません。
あるいは、株式の売買。現在すでに、株の売買を自動で行うシステムが導入されつつあります。そうするとどうなるか。
たとえば私が、頑張って勉強して株のトレーダーになったとしましょう。そして、10年ぐらい経験を積んで、高いお給料をもらって、もう株で一生食べていくんだと思っていたとしましょう。そう思っていた矢先、人間には真似できない精度とスピードで株の売買を行う人工知能が開発され、普及し始めた。私は職を失い、路頭を迷うことになるでしょう。
あるいはICT。
米デューク大学キャシー・デビッドソン氏の研究によると、「米国で2011年度に入学した小学生の65%は、大学卒業時、今は存在していない職に就くだろう」とのこと。
なんと65%も! とお思いになるかもしれませんが、実はそこまで驚くべきことでもありません。
たとえばインターネットができたのは冷戦終結後の1991年。まだ30年も経っていない。だから、30年前には、インターネットに関わる仕事も会社も何一つとしてなかったのです。yahooの創業は1995年。楽天の創業は1997年。「世界で最もブランド力のある企業ランキング」の常連であるGoogleの創業は1998年。まだ20年も経っていないのです。
だとすれば、これから20年後にどんな技術が普及しているのか、どんな世の中になっているのか、もはや誰にも予測がつきません。
これからの時代、どんな知識や技能を身につけたら人工知能に代替されず、一生食べていけるのか。あるいは、どんな技術が世界を席巻するのか。ますますわからない世の中になっていくでしょう。
では、そんな世の中で生きていくために私たちが今身につけるべきは、どんな力でしょうか?
それは、学び続ける力、ではないでしょうか。
自分が今持っている技能が人工知能に代替されようが、重要なテクノロジーが変わろうが、新たなことを学び続けていけば、どんな時代の流れにも食らいついていくことができます。
たとえば、私がそろばんが得意だったとしましょう。そこに、電卓というものが普及してきた。もし私がそろばんができるだけの人であったら、私はそこで路頭に迷うことになるでしょう。けれど私が、学び続ける力を持つ人だったら? 私は今度は電卓の技能を身につけ、新たな職に就くでしょう。
そうしたら今度はそこに、Excelというものが登場した。もし私が電卓ができるだけの人であったら、私はそこで途方にくれるでしょう。しかし私が、学び続ける力を持つ人だったら?
ー私は今度はExcelを使いこなし、新たな仕事を得るでしょう。
学び続けること。それがこれからの時代、ますます大事になっていきます。
翻って、今、大変影響力の大きい試験、大学入試はどうでしょうか。ひたすら計算をしたり、歴史の用語を覚えたりした覚えはありませんか? 学び続ける力を、問えているでしょうか。間接的には問えているかもしれませんが、私にはちょっと怪しいように思えます。
下ののグラフを見てください。日本とアメリカの大学生が、それぞれ週に何時間ぐらい勉強しているかを示した図です(大学経営・政策研究センター「全国大学生調査」資料より)。
明らかに日本の大学生の勉強時間が短いのが分かります。
日本の大学生の80%以上は、授業外には週に10時間も勉強していません。週に10時間というのは、1日1時間ちょっとです。もはやアメリカと比べずとも、日本の大学生が勉強していないのがわかるくらいです。
やはり現状の試験では、学び続ける力を十分には測れていないと言わざるを得ないのではないでしょうか。
2020年に、センター試験が廃止され、新テスト(仮称:大学入学希望者学力評価テスト)へと移行します。実はその背景にあるのが、こうした事情。つまり、知識や技能ばかりを問う今までの入試は不十分だ、学び続ける力などもあわせて総合的に測れる入試にしようというのが、この入試改革の理念なのです。
文科省もすでに、主体性、つまり自ら学び続ける力を、「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」とともに、「学力の三要素」の一角に据えています。
時代は変わりつつあるのです。
ではそうした学び続ける能力を、いかに身につけさせるか。評価するか。
これは簡単なことではありません。
けれど、そうした能力は、やはり身につけさせなくてはいけない。評価しなくてはいけない。そしてそれを実現する方法を、考え続けなくてはなりません。
今年のROJE五月祭教育フォーラムでは、教育の専門家4名や学生登壇者とともに大学入試改革を中心に据えつつ、これからの時代を生き抜いていくにはどうしたらいいか、考えていきます。
これからの大学入試は、どのように変わっていくのか。そして私たちは、何をしていくべきなのか。一緒に考えてみませんか?
◆五月祭教育フォーラム2017◆
大学入試改革!問われる新たな能力! 〜現場と家庭は何をすべきか〜
【日付】5月21日(日)
【時間】13:30〜16:30
【場所】東京大学本郷キャンパス法文1号館25番教室
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